遅刻の理由【小話】

小話

(朝の教室、1限が始まってしばらくしてから)

(ガラッ)

サリー
サリー

はあ、はあっ……セーフ!
……じゃないか、やっぱりアウトか〜

(アイリーンは机から顔を上げて)

アイリーン
アイリーン

おはよ、サリー。今、先生に出欠だけされたよ。理由聞かれるかもって。

サリー
サリー

えー、もう〜!だってさ!
駅のエスカレーターが人で混んでて全然動かなくてさ〜
あと、靴下が片方見つからなかったし、あと、なんか朝から猫が変な目で見てきて……

(アイリーンはクスリと笑って)

アイリーン
アイリーン

最後のは関係あるの?

サリー
サリー

えっ?いや、なんとなく……プレッシャー的な?

アイリーン
アイリーン

そっか。でも昨日の夜、LINEで“明日ヤバい〜、起きれる気しない〜”って言ってたよね?

サリー
サリー

うっ……それは……いやでもね、目覚ましはかけたの!でもたぶん、夜中に夢の中で止めたかも…?

アイリーン
アイリーン

うんうん、気持ちはわかるけどね。
でも“駅が混んでた”って言うより、“寝坊しました”って正直に言ったほうがいいかもよ?
先生、ちゃんと見てるし。

サリー
サリー

……うん、たしかに……ごまかすのもクセになっちゃいそうだしね。

アイリーン
アイリーン

そうそう。言い訳しちゃうと、自分でも『仕方ない』って思い込んじゃうから。

サリー
サリー

あー、それ私めっちゃやってるやつだ!自己…なんとかバイアスってやつでしょ?

アイリーン
アイリーン

“自己奉仕バイアス”ね。なんでも自分に都合よく考えたくなるやつ。

サリー
サリー

よし、じゃあ今日から“奉仕”じゃなくて“反省”の方向でいこう。
アイリーン先生、どうか私を更生してください!

(アイリーンは笑いながら、サリーの頭をよしよしする)

アイリーン
アイリーン

まずは明日、早く来てくれたら十分です。

サリー
サリー

おっけー!……目覚まし、10個くらいセットしとこ!

(2人の笑い声が、静かな教室に少しだけ広がった)

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